「世の中は急速に変化している」なんてことは今さら僕が強調するまでもないですが、最近実感として特に強く感じるようになりました。それは僕も含め、デザイナー、クリエイターを取り囲む環境が大きく変化していると感じるからです。
仕事柄インターネット業界にも、雑誌やテレビなど、他のメディアにも関わりをもっているので、その実感は顕著です。デザインの仕事の多くは様々なメディアと密接に関わっていますが、メディアの変化はこのところ本当に凄まじい勢いで変化しています。
ご存知のように、雑誌は次々と休刊になり、出版不況などと言われています。テレビもかつてほどの勢いはない。ネットを介した新しいコミュニケーションが次々と現れ、人々のライフスタイルが変わる中で、いわゆる「マス・メディア」はかつての影響力を失っていると言われています。
これらのデザインの仕事に携わっていた人の中には、仕事減や制作費の値下げ圧力を受けている人も多いことでしょう。既存のメディアがまったく無くなるとは、僕は思いませんが、ある程度まで市場規模は縮小するのではないでしょうか。
少なくともデザインの需要は、今後もしばらく減少が続くと思います。
一方で、ネット、ネットと騒がれますが、ネットは調子がいいのでしょうか?
広告費などが投入されている金額を見ると答えはイエスです。
しかし、デザイナーにとって、というとどうでしょうか。
これも実感ですが、ウェブサイトのデザインなどは厳しい環境下にあります。
その背景には、インターネットが普及が進み、多くの企業がすでにそれなりにデザインされたウェブサイトを持っていますし、そうしたサイトの多くはCMSなどによって企業サイドで更新を簡単にできることで、かつてほどの制作需要は存在しません。
また、ウェブのデザイン自体、制作ツールの高機能化、優秀なデザイナーの流入、経験の向上などによって、ここ数年でデザインのクオリティも全体的にアップし、誤解を恐れずに言えば、定石的ないくつかのレイアウトパターンに則ったサイトであれば、どこに頼んでも大差ない、デザインのコモディティ化とでもいうのでしょうか、が起こっているような気がします。
「それらしいデザイン」で良ければ、今日ではデザインテンプレートのサイトに行けば、1万以上のデザインテンプレートがその場でダウンロードできる時代です。
デザインも費用対効果の視点から考えると、「その程度で十分。あとは安ければ安いほどいい」というクライアント側の判断は、こうした経済状況もあり、拍車がかかっていますし、客観的に見ると、そうした判断もあながち間違っていない気がします。
ちなみにファッション業界でもここのところ「ファストファッション」という言葉が話題に上りますが、消費者は「これで十分。」という状態だと思います。
実際にトップブランドと比べても(もちろん素材の善し悪し等があるにせよ)機能的に劣らず、トレンド感もあるのですから、移り変わりの激しいシーンの中で、若い人にとっては重宝されるのもうなずけます。
僕はこうした現象を前述のことも含め、デザイン、クリエイティブ業界全般に言える現象だなと思うのです。
制作ツールは非常に高度になり、誰でも簡単にデザインできる時代になりました。
一人のデザイナーがグラフィックからウェブ、映像、果ては音楽までもMac一台で作れる時代です。競争が激しくなれば、クオリティは上がり、コストは下がるでしょう。「これで十分」というものは、今まで以上にコストがかからず手に入る時代です。
もはやPhotoshopやillustratorが使える程度では競争力はなく、「デザイナー」は名乗れないでしょう。
僕はこうした流れを特に否定するつもりはありません。
僕が思うのは、今、デザイン、クリエイティブという仕事に関わる人の環境はこれまでとは大きく変化してきたこと。そして、これが一番重要だと思うのですが、その中で、「デザイナーとは何か」という本質を突きつけられている気がします。
これからのデザイナーに求められるものは何だろうか。
これからの時代の新しいデザイナー像とでも言えばいいのでしょうか。
「新しいデザイナー」とはどのようなものでしょうか。
そんな事を考え始めました。

